伝統鍼灸講座 -伝承を加えて-
甲子園鍼灸治療センター監修
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気について
伝統鍼灸講座
伝統鍼灸での気について
体内の循環物について、伝統鍼灸は気・血・水と定義しています。
この時、多くの人は、血と水というのはわかるが、気という言葉でちょっと不審な顔をなさいます。
気は存在するのか?という怪しい顔をなさいます。
確かに、気というものは見えないものですから、あるかないかという証明が難しいです。
この点において、皆さんは、気は見えないものだ、と同意見であることが多いです。
ここで、湯気はみえるよ、とおっしゃる人がいたら、その人はかなりのプロフェッショナルです。
気は見えないというのが、多くの人の共通認識です。
その認識で正しいのですが、少し視点や言い回しが違います。
気というものを知ってもらうには、次のように覚えることをおすすめします。
見えない何かを気と呼んだ、ということです。
つまり、気とは1つではないということです。
存在するようだ、または、確かに存在するが、見えないものを気と呼んだのです。
ですから、気という漢字は単体で使うよりも、他の漢字と組み合わせて使うことが多いです。
例えば、空気、電気などです。
元気というのも在るようですが、みえるとは言えません。
また、顕微鏡などでは見えても、目では見えないものも気といいます。
栄養素などがこれにあたります。
ですから、伝統鍼灸では、食べ物の栄養を総称して後天の気と呼びます。
先天的と後天的のこう天です。
つまり、生まれてからからだに取り入れるものの総称を後天の気としたのです。
食べ物なので目に見えますが、そのなかの栄養素は目では見えません。
ですが、在る以上は名を付けなければなりません。
ですから、食べたものが消化されて、からだに吸収されたものとして後天の気という総称がつけられたわけです。
また、空気も存在しますが、呼吸でからだに吸い込まれるものを宗気と呼びました。
そして、経絡の中を流れるものは経気と名づけられました。
経気は、治療をしているとその動きを患者も感じ取ることができます。
それは、神経や筋肉内を流れる電気のようです。
運動器系のコリや痛みに対して、経筋という筋肉をつないで流れる経絡の流れを改善する治療を行なう時、ピリッとした感覚を体内電気の流れとして感じることができます。
このように、気と一言で考えるとわからなくなる言葉も、見えないものという意味ととらえて、気という漢字が付いている言葉を並べてみると、気という言葉は確かに必要であって、目に見えずに存在するものの総称であるとわかるということなのです。
伝統鍼灸を志す人は、気という言葉が出た時、どの気のことかな、と考えてください。
それにより、伝統鍼灸で使われる気という言葉が、消化器の治療、呼吸器、運動器、感染症など、それぞれに対応していることがわかります。
また、現代科学では解明されていないが、確かに存在しているであろう何かであるということにも考えが至ります。
伝統鍼灸を学んでいくと、たくさん気という言葉を聞くことになります。
その気を細分化して相互関係を把握することが大切なのです。