目的は同じで方法が違う鍼灸と漢方薬
鍼灸と漢方薬は、どちらも東洋医学の一分野として古くから伝わってきた治療法です。
しかし、それぞれに特徴があり、診察法は同じでも治療法が異なるものであると言えます。
この記事では、鍼灸と漢方薬の関係について、その歴史や理論、効果や適応症などを紹介します。
鍼灸と漢方薬の歴史
鍼灸と漢方薬は、ともに中国から日本に伝わった医療技術です。
鍼灸は紀元前から存在していたとされ、古代中国の医学書『黄帝内経』にも記述があります。
漢方薬は紀元前後から発展し始め、後に『傷寒論』や『金匱要略』などの名著が生まれました。
日本では奈良時代に鍼灸と漢方薬が伝来し、平安時代には朝廷や貴族の間で広まりました。
江戸時代には庶民にも普及し、多くの鍼灸師や漢方医が活躍しました。
明治時代以降は西洋医学の影響を受けて衰退しましたが、現代では再び注目されています。
鍼灸と漢方薬の理論
鍼灸と漢方薬は、共通の理論に基づいています。
それは、人体には気・血・水などの物質と陰・陽・五行などの法則があり、それらが調和していれば健康であるという考え方です。
また、人体は外界と連動しており、季節や気候などの環境要因や感情やストレスなどの心理要因が体調に影響すると考えます。
したがって、病気の原因は気・血・水の不足や滞り、陰・陽・五行の不均衡、外邪(風・寒・暑・湿・燥・火)や内傷(喜・怒・哀・懼・思・驚)などによるものだと考えます。
そして、これらの原因を取り除き、気・血・水を補い流し、陰・陽・五行を調和させることで病気を治すと考えます。
鍼灸と漢方薬の診察法
鍼灸師も漢方医も、同じような診察法を用います。
それは、「望・聞・問・切」と呼ばれる四診法です。
望診は患者の顔色や舌苔などを観察することです。
聞診は患者の声や呼吸音などを聴くことです。
問診は患者の症状や生活習慣などを尋ねることです。
切診は患者の手首の動脈を触って脈を診ることです。
これらの診察法によって、患者の体質や病態を判断します。
鍼灸と漢方薬の治療法
鍼灸師と漢方医は、診察法は同じでも治療法が異なります。
鍼灸師は、
鍼灸師は、人体にある経絡(気・血・水が流れる経路)や経穴(経絡にある特定の点)に鍼や灸を用いて刺激することで、気・血・水の流れを改善し、陰・陽・五行のバランスを整えます。
鍼は細い金属製の針で、皮膚や筋肉などに刺入します。
灸はヨモギなどの薬草を練って作ったもぐさを経穴に乗せて燃やしたり、温めたりします。
鍼灸の効果は、痛みや炎症の緩和、血行や代謝の促進、自律神経や免疫系の調整などが挙げられます。
鍼灸の適応症は、頭痛や肩こりなどの筋骨格系の疾患、神経痛や不眠などの神経系の疾患、消化器系や呼吸器系などの内科的な疾患、不妊や生理不順などの婦人科的な疾患などがあります。
漢方薬は、
漢方医は、人体にある気・血・水や陰・陽・五行に応じて、動物・植物・鉱物などから作られた薬剤を内服または外用することで、体内の不調を改善し、自然治癒力を高めます。
漢方薬は一般的に数種類の生薬を配合したもので、処方されるものによって効能や作用が異なります。
漢方薬の効果は、気・血・水の補充や調整、陰・陽・五行の均衡化、外邪や内傷の除去などが挙げられます。
漢方薬の適応症は、風邪やアレルギーなどの感染性や免疫性の疾患、胃腸障害や便秘などの消化器系の疾患、高血圧や動脈硬化などの循環器系の疾患、うつや不安などの精神系の疾患、更年期障害や生理不順などの婦人科的な疾患などがあります。
鍼灸治療と漢方薬まとめ
鍼灸と漢方薬は、東洋医学の一分野として同じ理論に基づいていますが、診察法は同じでも治療法が異なるものです。
鍼灸は経絡や経穴に鍼や灸を用いて刺激することで体内の気・血・水を調整します。
漢方薬は生薬を配合した薬で治療をします。
鍼灸治療と漢方薬は、診察法や診断法は同じですが、治療の方法が違うということなのです。
ですから、併用もできるということです。